2、負が生み出し、正が生み出す物

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顎へ突き抜かれた左拳を最後に、拳の嵐は止む。 サンドバッグと化していたガイの屈強な身体は、背中から大地に落ち微かな砂ぼこりを起こした。 ・・・終わった。 あ、そうだ。 あの二人は・・・。 少し荒い呼吸を調え、後ろを振り向く。 驚愕に表情を支配されたままのネルファと視線が重なるが、明良は少し微笑みを見せる。 ネルファもシルファも唖然としていたが、元の明良に戻った事に気付き近付き歩き出すシルファ。 ネルファの横を通り過ぎるが、慌てたネルファに引き止められる。 「ま、待ちなさいシルファっ!何があるか解らない・・・」 ネルファに振り返り首を振る。 「大丈夫だよ。さっきまでの嫌な感じはしないし、それはお姉ちゃんの方が解ってるはず。」 そう笑顔で返され渋谷ついて行くネルファ。 そんな姉妹を見て、案外ツンデレなのかも知れないと俺は思った。 「大丈夫?」 明良のもとに来るなり、そう投げ掛けるシルファ。 「あ、ああ。なんとか・・・」 「貴様は本当に何者――」 ネルファが何か俺に言ってるが良く聞き取れなかった。 なんだ?頭がぼーっとして視界が霞む・・・。 先程まで明良を包んでいた白色のオーラは煌めきを失い、飛散していた。 「おい?聞―いて――いる――」 何だ?集中するけど途切れて・・・。 「お――い―――だ――」 どんどん声が遠くなって・・・。 「―――」 大丈夫。 そう伝えるつもりで言った自分の声も上手く聞こえないや・・・。 ぐにゃぐにゃでぼやけて、気持ち悪い・・・。 明良の身体はゆっくりと前のめりに倒れ出す。 「――――!!」 あれ・・・、二人が俺を見下ろしながら何か言ってる・・・。 なんだろう・・・。 けど、暖かい・・・。 ネルファ・・・なんで、そんな・・・悲し・・・いか―――お――― それを最後に明良の意識は途絶えた。
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