3、深紅の天才魔法医

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―――ん。 此処は・・・。 古びた木造の部屋、そして今には珍しい砂壁。 ああ、そうか・・・此処は俺の夢だ。 それで、あの人の家って事か・・・。 懐かしいな。 そっと砂壁に触れ、過去の想い出を思い出す。 確か、あれは―――。 当時中学1年生だった俺。 あの人、夏波宏那(ナツハヒロヤス)と出逢った。 正直な処、思い出すと暗くなるから過去は嫌いだ。 簡単な話、俺は恐らく捨て子。 いまいち良く解らんが、物心が芽生えた頃には孤児として施設に居た。 父親も母親も、ましてや兄弟に親戚の類いすら居るのかすら知らない。 ただ、俺には中学に入って間もなく出逢ったこの男が唯一の絆を作ってくれた。 出逢いなんて綺麗な表現をしちゃいるが、大した内容なんかない。 近所に住むただのオタクだった。 宏那は近所でも有名な嫌われ者で、挨拶はしない、夜中に奇声を発する等、度々近所から迷惑の声が上がってた。 荒れに荒れて笑顔を失って根暗な俺が、そんな奴と関わりを持つなんて不思議だった。 学校の帰りに寄ったコンビニで俺は立ち読みしてたんだ。 家、なんて呼べる帰宅場所はなく施設だったから帰りたくなかった。 そんな俺の日課が立ち読みで、立ち読み中ふと隣に人の気配を感じて横目に見たら奴だった。 「よぉ、根暗。」 正直、てめぇだけにゃ言われたかねぇよっ!って思ったけど、人との関わりを拒絶してクラスでも孤立してた俺に対処の仕方なんて解る筈もなく。 気付いたら、奴の家にあがってた。 そっからはお互いに関わりを持たない人間同士、仲良くなるのに時間はかからなかった。 本当にビックリする位に厨二オタクで、けど俺には良くしてくれた。 通信少林寺なんてふざけた通信教育も、1人じゃヤル気しねぇ。とかで俺を付き合わせたり。 結果的にあの坊主頭との戦いに役に立った訳だが、本当に厄介で世話の焼ける大人だった。 めちゃめちゃだらしないし適当でヤル気は常に無いけど、人間として大事な処は持ってて次第に近所にも伝わって変な人はちょっとズレた人になってた。 俺が変われたのも、宏那が居たからで・・・。 けど彼は、ある日忽然と姿を消した・・・。
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