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未夜は衣服から伝わるほのかなフィオの体温に動揺する。
この状況からどうやって抜け出そうかと考えていると、目を吊り上げた葉月がフィオをにらんでいた。
「こら、校長が何をしているんですか。これはセクハラですよ」
「いいじゃないですか。未夜君はセクハラだなんて、思っていませんよ。ね?」
同意を求められても困る。そんな気持ちを顔には出さず、否定もしなかった。
フィオの両眼がきらりと光った。
「未夜君が何も言わないのは、肯定です」
「誤った解釈はやめてもらいたいですね。未夜はあなたを傷つけないために、何も言わないだけです」
葉月がフィオの手を放そうと引っ張る。
前屈みになって、引き離そうとしているので顔が近い。胸のどきどきが高まり、身体がほてった。
「未夜を放しなさい。あなたは校長の立場をわきまえてください」
「ええ~、校長の立場を理由にするのはやめましょうよ」
「さっさと未夜を放しなさい。私の堪忍袋の緒が切れる前にね」
優しく微笑む、葉月の目は少しも笑っていなかった。気品ある指の動きで、伊達眼鏡のフレームを押し上げる。
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