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てっきりそのケーキは葉月が食べるものだと思っていたが、違ったようだ。
未夜が二口目を口に入れた時点で、フィオのケーキは半分なくなっていた。なんたる早さ。その早さは驚異的だった。
葉月はフィオの人柄をよく分かっているのか、ケーキを出されなくても何も言わない。ゆっくりな手の動きで紅茶を飲んでいた。
未夜がケーキを食べ終えて、紅茶でのどをうるおすと、フィオが話しを切り出した。
「私が未夜君を呼んだのは、ミラノのと一緒にある騒ぎを解決してほしいからなんです」
「ある騒ぎ?」
何か学園でよくないことが起きたのだろうか? 学園際が開催されているこんな時期に、一体なんの騒ぎが発生したのだろう。
「塔の近くで出るんですよ」
フィオの声が、低く押し殺された。これから言ってはならないことを口に出そうとするように。
「何が出るんですか?」
「……幽霊です」
両手を折り曲げ、フィオがふふふと不気味に笑った。未夜はどう反応していいのか分からず困ってしまう。
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