395人が本棚に入れています
本棚に追加
「ミラノ、あなたは前に進みたいのか、進みたくないのか。どっちですか?」
「……」
葉月は答えない。口を固く閉じ、ぎゅっと手を握りしめていた。
遠くの方から人々の声が響いて聞こえてくる。未夜はこの部屋だけが、別世界になってしまったような錯覚を感じた。
「本当にこのままでいいと思っているんですか?」
葉月に向けられていた視線が、未夜に移される。
フィオの目は真剣だった。彼の目から言葉にしなくても、強い思いが伝わってくる。
無意識のうちに入っていた肩の力を抜くと、葉月を見やった。
「私は葉月の足手まといかもしれないけど、一緒に幽霊騒ぎを解決したい」
「それはだめです」
「お願い、葉月」
じっと葉月の目を見つめて、右手を取る。握る手に力がこもった。
最初のコメントを投稿しよう!