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沈んでいた気持ちが、消えて明るくなかった。それがフィオのおかげだと思うと、感謝したくなった。
ありがとうと普通に言うのは恥ずかしいので、小さな声で口に出す。
「……フィオ校長、ありがとう」
「うん? 未夜君、何か言いましたか?」
「いいえ」
未夜が首を振り、フィオに訊く。
「もっと幽霊騒ぎについて、詳しいことを教えてくれませんか?」
「ふふ、未夜君はミラノの思いをむだにするんですね」
「え、その……」
「別に悪い意味で言った訳じゃないんですよ。きみが知りたいというのなら、教えましょう」
フィオは笑って、首を下に動かした。目を閉じて開くと、口を開ける。
「塔の近くに幽霊が出たのは、三日前の夕方です。最初の目撃者はミラノでした」
「葉月が!?」
初めに幽霊を見たのが、葉月だったことに驚く。目撃者は他の誰かだと思っていたのだ。
フィオは葉月からその話を聞いたと言った後、次の目撃者はシズクだとつけ加えた。
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