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彼は夜の見回りで、偶然幽霊の姿を見たらしい。
その後、生徒たちの中でも黄昏時に幽霊を見る者が数人現れて、その噂がどんどん広がったのだ。
「ミラノとシズクの証言によると、幽霊は藍紫色の髪の男で黒装束だったそうです。これは噂と一致しています」
「他に分かっていることは?」
「その幽霊がすぐに姿を消してしまうことと、夜だけではなく、夕方の時間に出る場合もあるということですね」
「そうですか……」
未夜は立ち上がり、フィオを見る。「私はこれで失礼します」と言って、校長室を出ていった。
扉が閉まる音を聞き、足音が聞こえなくなるとフィオはぽつりと呟く。
「ミラノ、未夜君は幽霊騒ぎに関わるつもりですよ」
テーブルにおいたまま、ィーカップの取っ手に指をからめ、口元にかすかな笑みを浮かべる。
フィオは中に入っている紅茶を飲もうとしないで、ただ赤い液体を見つめていた。
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