【光の精霊】

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「シュン!」 ミズハはそう叫ぶ。しかしシュンは戻ってはこなかった。 ――くそ、なんで俺は何も出来ないんだ! シュンはひたすら走った。 目的なんてない。 ただ何も出来ない自分から逃げたかっただけかもしれない。 走り続けるとそこに太陽を反射してキラキラとひかる青い海があった。 そこまで来るとシュンは足を止める。 「畜生ーーーーーー!」 行き場のない自分への怒りをシュンはどうしたらいいのかわからなくなっていた。 「助けなきゃいけないのに……。俺はなにをやってるんだ…。」 そう言って砂浜を叩く。すると、その瞬間さっきと同じような衝撃が頭に走る。 そこでシュンの意識は途切れていた。 「つぅーー 。」 ズキズキと痛む頭をさすりながらシュンは辺りを見回す。 「ここはどこだ………。」  シュンは何が起きたのか分からなかった。 さっき海辺にいたはずだった。 なのに今いるのはすべてが真っ白な空間だった。 すると誰かの声が聞こえてきた。 『お前はそれでいいのですか?』 それは、ついさっき聞いたばかりの高い声とは違うちょっと低い声だった。 しかし、今回は声が聞こえると言うより心の中に響く、簡単にいえばテレパシーのようだった。 「光の精霊なのか。頼む、俺をもとの世界に戻してくれ!!」 シュンは何もない空間に叫ぶ。 『なぜです?』 「もう嫌なんだ、あんな風に死んでいく人をを見るのは…………。」 そう言ってシュンは拳を握りしめる。 「無理なんだ、俺にあんなバケモノを倒すのは……。」 そう言うと息をする間もなく、光の精霊はシュンに尋ねる。 『お前はそうやって自分の嫌な事から目を背けるのですか?逃げるのですか?やってみなければわからないじゃないですか。』 「倒し方も技術もないんだ、無理に決まっている!」 地面とおもわれる所をシュンはおもいっきり殴る。 『無理ですか、誰がいつ無理なんて決めたのですか? 試しても無いに 諦めるのですか。倒し方?技術?それがなんですか。 暴走獣を倒すために必要なのはそんな事じゃありません。』 淡々と光の精霊はシュンに語る。しかしシュンには光の精霊が言っている事が分からなかった。
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