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さっき無我夢中で走っていた道を今は全力で戻っていた。
「はぁはぁ……。」
息を切らして膝に手をついてとまる。
すると煙が立ち上る村が見えてきた。
「急がなきゃ…。」
棒のようになった足にもう一度力をいれる。
しかしその時脳裏にもうダメかもしれないという考えが浮かぶ。
「何考えてんだ、俺は!」
信じらんない考えをしていた自分をしかる。
そんな事を考えている間に村の入り口についていた。
「みんなは、ミズハはどこだ……。」
そう呟きあたりを見回す。
すると不意に女性の叫び声が聞こえた。しかしその声には聞き覚えがあった。
「ミズハっ!!」
その瞬間シュンは声のする方へ風の如く走った。
きっと何かあったに違いない。そうなると焦りがうまれる。
「今行くからな…。」
しかしシュンは家の角を曲がった時、恐ろしい光景を目の当たりにする。
鋼色に輝く物を左手に持って壁に寄りかかっている少女を見つけてしまったのだ。そしてよく見ると、その左手は血にまみれていた。
「ミズハー!」
それがミズハだとわかったシュンは慌て駆け寄る。
「ミズハ大丈夫か、おい、ミズハっ!」
「………シュン……。」
力無い声で言うとシュンの手を握る。
「戻って…来てくれたんだ………。」
「そんな事はいい、どこだ、傷口は。」
するとミズハは力無く左手をシュンに見せる。
傷は意外に小さかったがまるで何かの牙が刺さったようだった。
でもシュンにはその犯人がわかっていた。
あいつしかいない。
「……シュン、お願い……私の大切な村を……守って…。私じゃ、守れなかったから……。」
そう言うとミズハは気を失ってしまった。
「ミズハ、しっかりしろ!おい、ミズハっ!」
揺さぶるがミズハは目を覚まさない。
「このままじゃ、出血死してしまう……。」
シュンに焦りがうまれる。
何か血を止める物はないかとポケットに手を突っ込む。
「あ………。」
なにかを見つけたように勢いよく手を出す。
そしてポケットから顔を出したのはタオルだった
。
「ミズハ、死ぬなよ。」
そして、ミズハの左手にそれを巻いた。
しかしこのままここに放置したら奴にやられてしまうかもしれない。
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