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「誰かっ!誰かいませんかっ!」
シュンは必死に叫んだ。しかし返事をしたのは人ではなかった。
そいつは大事な人を傷つけた奴だった。
茶色い体、大きな赤い眼、そして発達した牙と爪。それは昔図鑑で見たことあった“ヴェロキラプトル”にそっくりだった。
しかし、大きさはシュンよりはるかにでかい。
「ギャアアアアア!!」
獲物を見つけた喜びだろうか?暴走獣は雄叫びをあげる。
「…お前がミズハをやったのか?」
返事がこないのを知っていても、シュンはそう問いかける。
「…俺は…もう迷わない!村を…、いやこの世界は俺が救う!」
そう叫びシュンは鞘から剣を抜き放つ。
その剣は太陽の光を浴びて鋼色に輝いていた。
「お前は俺が倒す。」
すると暴走獣はいきなりシュンにむかって突進をはじめる。
「ま、まじっ!」
距離は充分ある、避けるのは容易いだろう。
しかしシュンの後ろにはミズハがいた。
たとえシュンがさけてもミズハは避ける事は出来ない。
考えた挙げ句、ミズハを守るように自分が盾になろうと考えた。
多少の怪我は覚悟した。
するとまた声が響く。
『お前は奴だけに集中するのです、彼女は私が責任を持って守る。』
俺はその声を信じて右に避ける。
暴走獣は突進の勢いを殺せずそのまま、倒れ込むようにミズハの寄りかかっていた家に突っ込む。
「大丈夫か…?」
きっと大丈夫だと思っていても、心配になりミズハに目をやる。
「よし、大丈夫だな。」
それを確認するとシュンは胸をなで下ろす。
きっとミズハの周りの赤い煙のようなものが守ってくれたに違いない。
「グァァァァ…」
そして、再び暴走獣はシュンに向き直る。
しかしその時、もうシュンは暴走獣に迫っていた。
「やあぁぁぁぁぁぁ!!」
暴走獣の懐に潜り込み右手の剣で力いっぱい左足を斬りつける。
しかしその斬った時の感覚は想像とは違かった。
剣と足の鱗とがぶつかる。しかしあまりの硬さにシュンは大きいのけぞる。
「っぅ~、なんて硬さなんだ。」
そのせいで右腕に衝撃がはしる。
それはまるで金属製の棒でコンクリートを殴ったような衝撃だった。
「畜生、痛くて握れねぇ。」
剣を左手に持ち替えるが盾があるため攻撃は出来ない。
仕方なく手の痺れが回復するまで待つ。
なぜだろうか、その一瞬だけ敵から注意をそらしていた。
それがもしかしたら命取りになるかもしれないのに………
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