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外の景色は地獄のようだった。
家屋はボロボロに倒壊しあちこちが燃えていた。人々の姿は見当たらないが、歩いて行くと無惨にも引き裂かれた死体や体の一部がなくなっている死体が無造作に道に転がっていた。
「くそ、これ以上犠牲を増やしてたまるか……。」
シュンは重たい体を引きずるように歩いていた。
目指すは広場とミズハが言っていた村の中央。
彼女によれば、そこに暴走獣達を誘導したらしい。
「……っ!!」
広場を血に染まっていた。
もちろん人間の血だろう。
そして元は人間の形をしていただろうモノは広場の中央で屍の山となっていた。
「間に……合わなかったのか……。」
その山を見てそう呟いた。
しかし、暴走獣の姿が全く見当たらない。
「あいつらはどこに行ったんだ?」
暴走獣がいないのを確認して、シュンはその山に近づく。
「ごめんなさい……。俺が、俺がもう少し強ければ……こんな事には、ならなかったのに……。」
思わず、涙が零れた。
なぜだかはわからない。自分の無力さへのかなしみか、それとも死んでいった人への同情の涙か、それもわからない。
「気にするな、これは私たちで決めた事だしな。」
そう呟くとその山からかすれた小さな声が聞こえた。
「あ、あなたは……。」
シュンはもう涙を我慢できなかった。
シュンに聞こえた声の主はさっきシュンを助けてくれた人物。そう、ミズハの父親だった。
「君、ミズハを連れてどこかへ逃げてくれ。」
血まみれの顔でどうにかシュンへ思いを伝える。
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