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「そ、そんな事俺には出来ませんよ。」
シュンは首を大きく横に振る。
「頼む、ミズハは大事な娘なんだ。守ってやってくれ。私にはもうミズハを守ってやる事は出来ないんだ。」
そう言うと彼は腹の部分を指差した。
「…………!!」
あまりの悲惨さにシュンは絶句する。
指差した腹の部分は真っ赤に染まっており、よく見ると右脇腹はえぐれていた。
「そ、そんな……。」
どうしたらいいのかわからず黙ってその場に立ち尽くしているとシュンの耳にあの憎たらしい声が入ってきた。
「グアアァァァァァ!」
新しい獲物を見つけた喜びだろうか、暴走獣達は甲高い声を上げる。
「……早く逃げるんだ……。」
シュンは微動だにしなかった。
まるで何かに心を奪われたように。
「……俺は……逃げません。俺は時代の旅人なんだ。困っている人を簡単に見捨てる奴にはなりたくないんです!!」
そう言ってシュンは剣を抜き放つ。
そして暴走獣をにらめつける。その眼には怒りの炎が宿っていた。
「皆さんの敵は、俺が討ちます。」
そう言って短剣の先を真っ直ぐ暴走獣に向ける。
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