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美月の言葉に、男は鼻にティッシュを詰めながらため息をつく。
「そりゃないでしょ、美月ちゃん。ちゃんと、紹介してよ」
「仕方ないですねぇ…、ご自分でどうぞ」
「あー…、うん」
男は頷いて、絢子に向き直る。
「えっと、改めてまして。社長の真田 誠一(さなだ せいいち)だ」
「…さいですか」
(嘘くさい名前だなぁ…)
どの辺が真で、どの辺が誠なのか、とても疑わしい。
「あ、今嘘くさいとか思ったでしょ?」
「(ビクッ)ま、まさか…」
「まぁ、嘘くさい名前ですよね。でも、これが本名らしいんですよ、どうして名前の通りに育たなかったんでしょうね、親不孝に程がありますよね」
「そうですね」
「あのさぇ、もしかして俺イジメられてる?」
「「まさかまさか」」
少しムスッと顔で誠一は美月と絢子を見て、ため息を吐き出す。
「はぁ…、まぁいいけど、それよりお嬢ちゃんはオジサンに自己紹介してくれないの?」
「あわわわわっ!す、すみません!」
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