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(何なんだこのオッサンは…)
思わずため息が出そうになって慌てて飲み込む。
真剣な表情になったと思えば、こんなことを言ってくる誠一に、絢子は頭を抱えたくなる。
本当に、良い歳した男が何を言っているのだか。
「えー…、いいじゃん。呼んでくれなきゃ、オジサン拗ねちゃうー…」
そう言って、誠一は頬を膨らませる。
(うわぁ、微妙過ぎる…)
オッサンが頬を膨らませる姿は、きっと後にも先にも誠一以外に見ることがないだろう。
しかし、そんなものに希少価値は見いだせない、だって微妙過ぎる。
オッサンが頬を膨らませる姿なんて、見てて決して気持ちの良いもんじゃないと知った今日この頃。
絢子は、引きつる頬を抑えながらデスクに向かって指を差す。
「拗ねてもいいから、書類やって下さい。昨日の分もまだ終わってないんですから…」
「やーだ!呼んでくれきゃ仕事しない~!」
おおっと、今度は頬を膨らませたままそっぽを向いた。
(えぇぇ~…?!)
この瞬間、絢子は悟った。
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