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頬を膨らませるのも、そっぽを向くのも、オッサンがして良い仕草ではないと。
(あぁ、何か今なら…)
昨日、無理だと言った木製バットも軽々振れる気がする。
「わかりました…」
絢子は諦めの混じった声で、呟く。
やっぱり木製バットは振れない、自分の中の大切な物を色々失ってしまいそうだから。
「…真田さん…。…これで良いですか?」
「誠一」
「え?名前で?」
「誠一」
「マジですかー…」
仕切りに名前を呼ぶように、誠一は自分の名前を呟いている。
仕方なく、本当に仕方なく、絢子は誠一の名前を口にする。
「せ、誠一…さん」
「うん」
「誠一さん」
「もう一回」
「誠一さん」
「後一回だけ」
「誠一さん」
「ワンモワ…」
「もういいでしょう!!?何ですか?!羞恥プレイですか!!?」
怒り出した絢子に、誠一は両手を前に出して首を横に振る。
「いや、違うから。んっ、名前呼んでもらったらオジサン元気になった。…下半身が」
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