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女が口にしたのは絢子への謂われのない中傷。
(私は、やましいことなんてしてないのにっ…)
絢子は、怖じ気づく心を叱咤して口を開く。
「わ、私は、知人の紹介でっ…っぅ…!」
ギリッと頬に爪を立てられ、絢子は悲鳴を飲み込む。
「へぇ?じゃあ、その知人とやらに足開いたのね」
「ち、違っ…」
「はーい、そこまで~」
間延びした声が、聞こえたかと思うと絢子の頬に爪を立てていた女の手が避けられる。
「あ~ぁ、赤くなっちゃって…。オジサンもっと早く迎えに来るべきだったよ~」
誠一はどこか申し訳なさそうに眉を下げて言うと、女に向き直る。
「で?お前は仕事しないくせに、真面目な人イビってんの?」
「はぁ?どーぜあんただって仕事してないでしょ?」
「ん、残念。俺には見張りがいるからね。給料泥棒しか出来ないお前らとは、違うんだよ。それとな…」
誠一は腕を壁につけて、威圧感たっぷりで女を見下ろす。
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