魔女と赤色。

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    ある年の冬。 その年は、非常に寒い年だった。 そして、この日は雪も降ってきていた。 彼女にしては珍しく、『破壊の魔女』こと日本経済を根本から掌握する宇叉木財閥総帥──宇叉木 羅美(うさぎ らび)は、誰もお供に付けず、一人で街を歩いていた。 「──あら、そこの貴方。そんな所にいれば、風邪を引いてしまうかもしれないわ」 ふと彼女は足を止め、誰が聞いても心地よいと答えそうな上品な声で、この震えそうな寒空の下、公園のベンチに傘も差さずに座っている男性に声をかけた。 その男性は変わった格好をしている。 全体を通して赤いのだ。 着ているスーツの色、ネクタイの色、靴の色。挙句の果てには、髪や目の色までもが真っ赤だ。
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