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赤い男は、宇叉木 羅美が声かけた時、少し驚いて、「お心遣い、ありがとうございます」と、赤いカラーコンタクトでも入れているだろうその目を向ける。
別にこの男が驚いたのは、宇叉木財閥の総帥にして創始者である宇叉木 羅美と知ったからとは限らない。
彼女は美しいのだ。
どんな人間でも、目ぐらいは必ず引く、一種妖艶な容姿と雰囲気なのである。
まず、宇叉木 羅美はもう長い間表舞台に顔を出しておらず、彼女が未だに総帥という位置に座り続けている事を知る人間は少ないので、その理由の方が大きいのだろう。
「隣り、よろしいかしら?」
「ええ、構わないですが」
「ではお言葉に甘えて」
と、彼女は魔法も使わないで素手でベンチの雪を払いのけ、赤い男の隣り腰掛ける。
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