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「土方さん、土方さんが猫呼ばわりするから朔が拗ねてますよ」
朔の顔を覗きこみながら沖田がそう報告すると、土方はくくっと可笑しそうに笑った。
「なんだァ?一丁前に拗ねるようになったのかよ」
そう言いながら朔の前髪に手を伸ばし、さらりとかきあげた。
朔は黙ってじっと土方を睨んでいる。
怖かねぇよと鼻で笑いながら、にしても大分気を許すようになったと感じていた。
拾った当初は近づくなと言わんばかりの雰囲気を全開にしていた彼女が、大人しく手当てもされるし、髪もいじらせる。
最初は心配していたが、試衛館の面々には大方馴れたようだ。
「つうかお前、こんなところで油売ってていいのかよ。ツネさんの手伝いやってるんじゃねぇのか?」
そう問いかけると、朔の目がまん丸に見開かれ、弾かれたように立ち上がった。
「慌てて転けんなよ」
ぱたぱたと出ていく朔を、一同は優しい表情を浮かべながら見送った。
「…で、不審者の件だったな」
朔の足音が完全に聞こえなくなったことを確認してから、近藤が話を切り出した。
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