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(随分遅くなった…)
日野(土方の実家)から試衛館への道のりを早足で歩いていた土方は、ふと、違和感を感じて足を止めた。
(…今日はやけに人通りが多いな…なんかあったか?)
冬の空は既に暗闇に包まれ、提灯を持たないと足元が頼りない。
そんな時間帯にもなると町人は殆ど外には出ないはず。しかし、今日は違った。
役人風の人間が提灯片手にそこらを歩き回っている。
散歩という雰囲気ではない。誰かを捜しているようなそんな素振りだった。
(罪人でも逃げたか?)
そんなことを考えつつ、絡まれても面倒なので何くわぬ顔で足早に通り抜けた。
町の通りを抜け、周囲を田圃に囲まれた畦道を行く。
そこで土方は再び違和感に襲われた。
「…血…?」
冷たい風が、微かに血の臭いを運んできたのだ。
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