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「じゃあ順繰りに打ち合いと、市民を守る稽古?始めよっか」
各々二人ずつ組み、一人が朔の側に立って竹刀を構えた。
(…いや…確かに一人で居たら危ないけど…これって何か違う気が…)
道場の隅に佇む朔は一人難しい顔をしていた。
「朔ちゃん、俺が守ってやっからな~。惚れんじゃねぇぞ!」
「あ、そうそう」
一番手の隊士が朔にそう話し掛けているのが聞こえたのか、沖田が思い出したように声をあげた。
「万が一、朔に傷ひとつでもつこうものなら…。此処には鬼が居ますんでね?誰とは言いませんが。
死にたくなければ死ぬ気で守りなさい」
「・・・・・・」
ソレ、ヘタすりゃどっちみち死にますよね?沖田センセ…。
にこにこと笑みを浮かべて言い放つ沖田に、隊士達は出かけた言葉を飲み込んだ。
「では、始めっ」
藤堂の合図で、再び打ち合いが開始された。
道場に響く無数の竹がぶつかり合う音に、雄叫びのような隊士達の気合い。
…飛び交う竹刀に舞う隊士。
「どぅわっ!!早速っ!?」
円を描いて飛んできた竹刀どうにか叩き落とし、横目でちら、と朔を確認する。
“・・・”
朔は子犬を抱き口をぽかんと開けたまま、稽古に見入っていた。
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