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たまに雄叫びに身体がビクついているが、興味深げにじいっと隊士達を見つめている。
女子が稽古に見入っているのを心の隅で不思議に思ったが、ひとまず無事なことにほっと安堵し、彼も稽古に目を戻す。
隊士が目の前まで転がってきたりはしたが、そこまで危険が及ぶこともなく、一区切りついた。
「止め!…じゃあ交代で。次は貴方」
「はい!」
護衛にはいる隊士が代わり、束の間の小休止の時に藤堂が 「そぅだっ」と楽しげな声をあげた。
「?どうかされましたか、藤堂先生」
「ねえ、朔に誰が一番格好よく守れていたか決めてもらおうよ!」
「はい??」
ちょっとお馬鹿な提案に沖田は思わず脱力した。
(…ぇ、わたし…?)
「折角ちょっと変わった稽古やってるんだしさ、どうせなら楽しんじゃお!!」
「稽古を楽しむ意味が解りませんよ平助…」
稽古に対しては人一倍厳しい沖田は渋面を貼り付ける。
「一番に選ばれた人には朔から何かご褒美が「受けてたちましょう」
皆まで言わせず言葉を被せ、竹刀を振って調子を確かめ始める沖田に、藤堂は思わず呆気にとられた。
「…朔ってすごいね。稽古の鬼の総司が…」
“??”
ぽそっと呟いた言葉は全ては朔に届かなかった。
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