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「…で、此処まで連れ帰った、と」
近藤がそう言うと土方は無言で頷いた。
「トシさんはその役人風の奴らが捜してんのがあの子だと考えてるのか?」
原田が訊ねると、土方は眉間にしわを寄せて小さく唸った。
「…何とも言えねぇな。役人どもは帯刀はしてたが。
ガキに刺さってた武器は奴らが使ったものか分からねぇし」
「もしそうだとして…あの子が役人に追われるようなことをしたって可能性は?」
「いや、ガキが何か仕出かして逃げた訳じゃねぇだろ」
藤堂の推測を迷いなく否定した土方に、驚きの視線が投げかけられる。
「…あんな風に悔しそうに…不安気に泣くガキがそんなこと出来るようには見えねぇんだよ」
どことなく照れくさそうに頭をかく土方を見て、一同は顔を見合わせて笑った。
「土方さんてば素直じゃないんだから」
おかしそうに笑いながら沖田が土方をからかう。
「何だかんだ難しい理由付けて…要するに心配で放っておけなかったんでしょう?優しい土方さん」
「黙れ宗次」
「赤らんだ顔で凄まれても迫力ねぇうげぶっ!!」
揚げ足を取った永倉が代表者となり、土方の制裁を受けることとなった。
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