vol.01 強がり

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  待機席に座った途端、黒服が呼びに来た。 「アイさん、ご指名です。」 入り口に目を遣ると、寒そうに背中を丸めたまっちゃんが見えた。 「早かったやん♪」 「いや、すぐ近くまで来てたからな。」 彼は、常連さん。 40代半ばの彼は独身で、不動産業を営んでいる。 そして、暇を持て余しているのか毎日のように店に来てくれる。 いつものように、まっちゃんと世間話をしている時、黒服が呼びに来た。 「すぐ戻るから待ってて。浮気したら、あかんよ♪」 営業トークでニコッと笑って、ヘルプの女の子と入れ替わる。 「12番テーブル、一見さんだからね。頼むよ。」 「うん。」 愛想のない返事をして、あたしは指示されたテーブルを、チラッと見た。  
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