川の秘密

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ひんやりとした空気を吸い込む。 夏の夜の仄暗い川。そこは本当に不思議な世界だった。昼間見た風景はどこに行ってしまったのだろうか、ついさっきまでの蒸し暑さはどこに行ってしまったのだろうか、迷子になってしまったかのように辺りを見回した。 川べりに生えている名も知らない草が手招きするように揺れる。彼らが誘い込もうとする先には川の流れる音が聞こえる。さらさらと鳴る音は川のひそひそ話のようだ。その声はこの場所の秘密をそっと語っているようにも聞こえた。 彼は耳を澄ませてその秘密を聞こうとしたが、何を言っているのかはさっぱり分からなかった。そのかわりに、彼の目ははじめてみる不思議なものを見つけた。 「光った!」 彼は小さな指をある一点に向ける。そこにはじんわりと明滅する青い光があった。 よく見ればあちこちに、蛍の放つやわらかい小さな光。暗い夜に恒星のような輝きを見せる。そして星々は徐々に増え、世界の形を変えていく。
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