合わせ鏡

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【散文】少女の体温を測って、それで診察はお終いにする。最後に男は、少女に質問する。「夢をみたかい」「みたよ〈註1〉」男は硝子の室を退室する。暗い廊下を一人で歩いていく。廊下の先で佇んでいる者がいる〈註2〉。満面の笑みを浮かべたその人物は猟銃を持っている。猟銃を構える。一撃。男は死ぬ。こういう決まりになっているから、このノートを読んだ男は絶対に死ぬことになる。老侍従も言ったではないか。ここでは大雪が降ると必ずだれかが死ぬ。猟銃を持った人物は廊下の先であなたを待っている。死ね。必ず死ね。(註2にあるとおりこの男を殺すのは私なのだ) 註1:真夏の午後、ある人物の事務所を訪ね、大雪に覆われた城館の画を見せて「箱のなかに箱があって、その箱のなかにまた箱があるとしましょう。それがずっと続くんだが、すなわちこれが世界の構造、宇宙の真理」と言う夢。 註2:佇んでいるのは私である。    
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