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【散文Ⅱ】少女の体温を測って、それで診察はお終いにする。男は硝子の室を退室する。廊下を歩いていくと自分の死体が転がっているのに気がつく。狼狽していると物陰から私が現れて「それは別のページの出来事だから心配することはない」と男に告げる。男はこんなことを言う。「それならばいいのだが。ところでこの不条理な感覚から推察するに、この世界はだれかの夢ではないだろうか」「それは当然ながら永遠の夢だろうよ、と私は言う」だがこれも臙脂色のノートに綴られた散文のひとつに過ぎず、Ⅱの次にはⅢが、そしてⅣが、Ⅴが控えているのは言うまでもない。ちなみに散文Ⅳのなかで散文Ⅸが始まり、その文中に散文Ⅷが挿入されることになっている。この構成についての批評は散文Ⅴにあるからそれを引用しよう。
【散文Ⅴより引用】私は永遠に訊いた。「箱のなかの箱、その箱のなかにもまた箱があるというのが世界の構造、真理だと君は言うけれど、ここまで読んだ限りでは、どうも違うようだね。だって箱Aに箱Bがあり、箱Bには箱Cがあり、箱Cにまた箱Aがあるような無秩序じゃないか」すると永遠は答えた。「そうだったかな?」私は言った。「そうだよ。散文Ⅱを引用しようか。【散文Ⅱより引用】ちなみに散文Ⅳのなかで散文Ⅸが始まり、その文中に散文Ⅷが挿入されることになっている。(引用終わり)つまりこれは例えるならば――箱Aのなかに箱Bがあり、箱Bの中に箱Cがある。そして箱Cにはまた箱Aがあって、その箱Aには箱Bがあるというようなものだろう?」すると永遠は答えた。「そのことに対する返答は散文Ⅵに書いてあるから参照しておいてくれ」
【散文Ⅵ】 窓も扉も無い部屋に、合わせ鏡。
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