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備忘録 主人公たち
【主人公A】増築を重ねて迷宮のようになってしまった市街に主人公Aが登場する。Aはあらゆる記憶をもっており、世界の全てを識っている。
「全てを識っているということは」Aは考える。「何も識らないということではないだろうか」
Aは膨大すぎる知識によって蝕まれ、緩やかに壊れていきながら、予定どおり主人公Bに出会う。
註:Aは全てを識っているので、当然これが小説であることも、自身が作中の登場人物であることも識っている。のみならず、その外部世界つまりこの地球のことも、太陽系のことも、銀河系のことも、さらにその外部世界のことも、――まさしく本当の意味で全てを識っている。
【主人公B】増築を重ねて迷宮のようになってしまった市街に主人公Bが登場する。Bはあらゆる事象を忘却しており、何も識らない。
「何も識らないということは」Bは考える。「全てを識っているということではないだろうか」
Bは悪化する忘却症に苛まれ、加速度的に壊れていきながら、偶然にも主人公Aに出会う。
註:Bは何も識らない。
Memo.全知の人物については、設定としてそれらしく書けるように思われるが、無知の(本当に何も知らないという意味での)人物については、どのように描写すればいいのか全然わからない。何しろ何も知らないのだから、「私は何も知りません」と言わせるわけにもいかない。そんな人物、想像することさえできない。よく考えると、主人公Bは「無」そのものではないだろうか。底知れないこわさを感じる。
主人公Aは「無」に出会うことになる。
主人公Aは全知なのだから、当然のなりゆきとして全能の性格をもつ。したがって「無」の存在を理解しているし、「無」そのものである主人公Bにも出会えるはずである。
その結果としてどうなるか。
(それはあとで考える)
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