月を拾った夜

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     涼しい風の吹くある夜のこと、月が路地裏に落ちてきた。  月は頭をさすりながら「これはうっかりした」と言って夜空に戻って行ったが、さらにうっかりしたらしく、落ちたときに欠けた砕片が路上できらきらしていた。  僕はそれを持ち帰って瓶に入れる。  何か不思議な力があるらしい。  磁力のような。  あれ以来、僕は毎夜、吸い寄せられるように、月に行く。  そんな夢ばかり見る。    
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