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釣りを始めた主人の表情は、まさに水を得た魚のようにイキイキとしている。
見ているこっちが嬉しいくらいだ。
「お前もやる?」
「……や、いいです」
私にどうやれと。
一応、人間みたいに話したりはできるから、主人は私のことを人間のように接してくれている。
だけど、実際は携帯だから無理なことも多いわけで。
小さい私は釣竿を持つことはできない。
「……そっかぁ」
いや、落ち込まないで下さい。
私と一緒に釣りができないことを残念がっていた主人も、魚が釣れ始めてからは満面の笑みで。
「ほら、撮って撮って!!」
「はい、チーズ!」
私はカメラを持って、てんやわんやしてます。
結構楽しい、かも。
いつもとは違い、主人のポケットを抜け出して、色んな風景を撮る。
「……ん、あれ?」
しばらくしていると、頭がふらふらしてきた。
もっと写真を撮りたいのに。
どこまでも続く、青い空と海とか。
主人の笑顔とか。
でも、も……無理。
私はゆっくりと瞳を閉じた。
fin.
はしゃぎすぎて、バッテリー切れ。
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