望月

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それからの三日間は、主に瑠樺の希望を叶えるために費やされた。 一般の娘らしく服に悩んだり、髪型を整えたりと日に日に彼女は年相応の、らしさを取り戻していったのである。 「瑠樺ちゃんを、学校に?」 研究室の応接間で、瑠樺を除いた面々が顔を揃えていた。 秋葉は全員を見回すと、意を確かめるように頷く。 「しかし、通信教育での彼女の学習は完了しています。わざわざ危険を冒さずとも」 瑠樺は目覚めてから二年の間に、一般的な教育課程を全て終了していた。 それを支えた真山の意見に数人が同意する。 「私は、形式ではない心の機微を瑠樺に学ばせたい」 「私も瑠樺さんの今後のために、とりわけ同年齢や幼い子供たちとの交流は必要かと考えます」 秋葉の意見を支える形で野仲夕海は語った。 彼女の論文に舌を巻いた経験のある真山は、渋い顔でネクタイを直しつつ切り出した。 「では城崎君。君に瑠樺さんの身辺警護を命じる」 「へっ!? 俺ですか? いや、ボディーガードをやりたくないわけではなく……その」 城崎は慌てたが、目の合った野仲に冷ややかに見つめられて下を向いた。 彼の意思に反して、真山は続ける。 「君はどういうわけか、図書司書の資格を持っているだろう?」 「成る程。彼が孫の間近に居れば我々も即座に対応が可能だ。真山君、感謝する」 話は決まった。 この話を聞いた瑠樺の弾けるような笑顔を見た城崎は、そこでようやく任務を了承したのだった。
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