---5月---

3/6
前へ
/26ページ
次へ
それから少しだけ愛佳と口論になったが、すぐに話しは逸れた。 「そういえば。明後日、ソナタ帰って来るから。」 「あ、明後日!?なんかめっちゃ急じゃない?」 「そう?別に急じゃないでしょ、日にち的に。」 そう。 本当に急じゃない。 私は何度この日を待ち望んでいたか。 こんなことを思うよになった私は、多分、相当ソナタのことが好きなんだろう。 でも、この気持ちは私の胸の中だけの秘密。 すると愛佳は、何かを思い付いたように手を叩いた。 「ねぇ、ミライ!うちいいこと考えた!」 「いいこと?愛佳のいいことは、よくないことの間違えだよ。」 「ひっど。そこまで言うことないじゃん!」 「冗談だよ。で、何なの?」 「ん~。ミライちゃんには教えな~い!」 昔から、愛佳は調子に乗り始めると私のことをちゃんづけにする。 でもそれは小さな愛佳の優しさだったりもして、そんな小さな優しさに何度も助けられたこともあった。 「何があるかわかんないけど、楽しみにしとくね。」 いつもより素直になる。 自分でもわかるくらい、私のキャラじゃない。 「なんかいつもより素直じゃんっ! まぁ、まだ翔ちゃんに話してないからわかんないけどね。」 「てか、いつやんの?」 「ミライとソナタくんが再開したら……かな?」 なぜか愛佳は疑問系。 「てかっ! 明後日ソナタくんが帰ってくるイコール明日は前夜祭だね~」 「前夜祭!?そんなのしなくていいって。」 「はぁ~っ!?前夜祭は必要でしょ! 本当っ!ミライちゃんは何もわかってないでちゅね~」 愛佳はまた調子に乗り始めた。 「とにかくっ!明日は前夜祭だよ?」 「うん。」 「乗り気じゃないね、ミライ。」 愛佳は少し拗ねる。 まぁ、かわいいから許せるけど。 「私、素直じゃないの。」 「そうでしたね~」 「でも明日病院なんだから…遅れるよ?」 「うん、いいよ!大丈夫!! 病院終わったらいつものカフェ集合だよ! また明日声かけるね。」 「わかった。そっちの方がありがたい。」 「楽しみだねっ!」 愛佳は嬉しそうに笑い、放課後のチャイムが鳴って、下校した。 この時はまだ ───いつまでも、こんな日が続けばいいのに。 そう思っていた。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加