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それから、私達は夕方まで授業をサボった。
「そろそろ帰ろっか?」
「そうですね」
私達は下校のチャイムと共に、屋上の階段を下って行く。
少し早めに歩く。
「ねぇ……いい加減、名前くらい教えて?」
そう彼に聞く。
彼は今日一番の笑顔をする。
その笑顔は、どこか切なく悲しい笑顔。
「秘密って言ったでしょ?」
「秘密って……私だけしらないのも気持ち悪いじゃん!」
「………………。」
「ねぇ?聞いてるの?」
問い詰めると彼は何も言わなくなった。
すると彼は私の顔を見つめてきた。
凄く真剣な目。
私は少し目を反らす。
「ほら又、あの時と同じ」
「………あの時?」
「そうだよ、あの時だよ……忘れちゃったの?先輩」
「…あの時?……」
それから私達は別々に帰って行った。
私は病院に向かいながら。
行く途中、さっきの彼の言葉で私はあることを思い出した。
私は彼と初めて会った訳じゃないということ。
そして、その時の記憶。
忘れかけていた、中学生の頃のことを………。
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