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「それは仕方ないですね?
泊まります」
「寝るのは別々にされちゃうとは思うけどね?」
「なっ?!」
「フッ
早く食べて遊ぼうか」
「は、はい」
樹里は戸惑った顔のままでまた食べ始めていた頃、湊眞は見知った顔を屋台で見つけた。
「あんた、あの時の」
「おや?
また会いましたね?
お嬢さんはあの日以来だね」
「何やってるんだ、こんな場所で?」
「何って、この通りたい焼き焼いてるでしょ?」
「あんたは何者なんだ?」
「ふふっ
それを聞きたいんだね」
「当然だ。
あんな事して戻らなかったらどうしてたと…」
「戻れたでしょ?」
「それは結果論だ」
「アレはね?
恋を知らない子にしか効かないオマジナイの入ったアメだったんだよ」
「オマジナイだと?」
「何の変哲もない普通のアメ」
「へ?」
湊眞は呆気に取られた顔をしていたが、男は続けてこう告げる。
「恋をする事が戻る条件ではあったけれど、ウサギにキスすると戻れたでしょ?」
「意味がわからない」
「甘い呪いみたいな物だったってだけ。
暗示に近いかな」
「もしかして、お兄さんマジシャンですか?」
「フッ
良く見破ったね、雫ちゃん」
「名前…」
「実は雫ちゃんを占った時に不吉な影が見えたんだ。
それでウサギに変わる暗示を掛けた…」
「事故に遭うのを阻止してくれたんですか?」
「嫌?
それをしたのは、湊眞くんだ」
「じゃあ、湊眞くんが居なかったら」
「死んでいたよ、確実に」
そう告げられて雫は一瞬戸惑った顔をしていたが、男は漸く名刺を渡してきた。
「また会えた際にはお話しようね?」
そう告げると、深山尊は屋台から姿を消して居なくなってしまったのだった…。
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