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少年に導かれたさき。
そこは急拵えの陣地だった。
元は公園だったであろう場所。
遊具は根こそぎ撤去され、数機のヘリと少年と同じような装備の人員が忙しなく動いていた。
と、此方を出迎えるように二つの白い人影が歩いてくる。
1人は男。
白い軍服に身を包んだ、恰幅のいい固太りの。
潰れた蜥蜴のような顔に自信ありげな、人を食ったような笑みを浮かべている。
2人目は女。
同様の白い軍服に引き締まり均整のとれた体つき。要するに、スタイルがいい。
無表情に、まるで男の影のようにつき従っている。
2人とも一見して軍の上層部の人間であると知れる。
「ようこそ、傭兵」
男が目の前に立った。
策士、という言葉がピッタリと当て嵌まる印象。
そして、この物言いは、
「俺がどういう人間か、知っていると?」
あからさまに警戒を込める。
女の方が僅かに身構えるが無視。
この手の、状況を自分の掌の上でまわすタイプに関わると、ろくな目に会わない。
「ああ。そういうことだ」
男の笑みが、さらに深くなる。
「さて、早速だが契約の話といこうか」
と、そこで初めて俺を連れてきた少年に目をやる。
まるで、今気付いたかのように。
「……ご苦労。下がって構わん」
慌てて敬礼し、陣地へ向かう少年。
「ついてくるがいい」
男は、その少年を追うように背を向けて歩き出した。
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