物語は突然に

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風ではらりと捲れたページには、顔を紅潮させた美少女。 「はっ?」 と、素っ頓狂な声をあげていると、後ろからドガァァァッ、と大きな音が聞こえる。 振り返ると、女性がさっき立っていた位置にはブレーキの跡、その先にはトラックがコンビニのウィンドウに突っ込んでいた。 大騒動。それ以前に、女性は驚いていた。 自分がこの少年に惹かれなければ、轢かれていた。 間接的ではあるが、助けられたのだ。 女性は偶然など信じていない。だからこそこれは――― 「わわっ、すいません! その、えっと、拾ってくれてありがとう……」 最後は消え入るような声。 先ほどの本を隠すように抱きすくめ、キョドる。 八代高校の制服……女性は不敵に笑い、口を開く。 「お主、名前はなんという?」
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