物語は突然に

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ユキトは今、困惑していた。 なんとか回収しきったものの、見知らぬ少女に本を見られてしまった。 それだけならまだしも、名前を訊くなんて……通報されたりしないよね……? と、内心ビクビクしていた。 それに、気づけばなんかかなり近くで事故が起きてて凄く騒々しい。 「―――なま、名前……ですか」 少女はウンウン、と頷く。 少女だからなんとか対応出来ているが、お巡りさんなんて来たら絶対我を失うだろう。 「早く教えぬか」 少女は小さな体を屈ませ、しかめっ面で顔を覗きこむ。 腰に手を当てたりなんかは凄く可愛らしい。 「えっと……その、幸代幸人……です」 「ユキシロ……ユキト……漢字は?」 「えっ……幸せに時代の代、また幸せに人……です……ケド」 ユキトは少女にすら敬語な自分がちょっとミジメに思えた。 ちょっとだけね。
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