252人が本棚に入れています
本棚に追加
ユキトは今、困惑していた。
なんとか回収しきったものの、見知らぬ少女に本を見られてしまった。
それだけならまだしも、名前を訊くなんて……通報されたりしないよね……?
と、内心ビクビクしていた。
それに、気づけばなんかかなり近くで事故が起きてて凄く騒々しい。
「―――なま、名前……ですか」
少女はウンウン、と頷く。
少女だからなんとか対応出来ているが、お巡りさんなんて来たら絶対我を失うだろう。
「早く教えぬか」
少女は小さな体を屈ませ、しかめっ面で顔を覗きこむ。
腰に手を当てたりなんかは凄く可愛らしい。
「えっと……その、幸代幸人……です」
「ユキシロ……ユキト……漢字は?」
「えっ……幸せに時代の代、また幸せに人……です……ケド」
ユキトは少女にすら敬語な自分がちょっとミジメに思えた。
ちょっとだけね。
最初のコメントを投稿しよう!