始動

2/7
24人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ
「捕縛……廃棄……」 ついに、鬼に捕まり犠牲者となった人物が出てきた…… 私は膝に力が入らなくなり、無気力にその場に膝をついた。 折角勇気を出して鬼姫を探しにきた矢先に殺された、二人の無念を考えるといたたまれなくなる。 他の皆も青ざめ、硬直している。無理もない…… 四人の生徒が、連続で殺された。落ち込まないほうがおかしい。 それに、私は麻耶の事が心配でならない。咲もきっと同じだろう。 校内で生徒が殺された事実は、麻耶が殺される場面を想像させた。 「何が……何が捕縛だ……何が廃棄だ……」 壁を思い切り殴り、皐月は吐き捨てるように言った。その声は心なしか泣いてるように聞こえる。 「皐月……泣いてるの?」 私が声をそう言うと、皐月は鼻をすすり悲痛に叫んだ。 「絶対だ!絶対ぶっ殺してやる!人間をゴミ同然と考えてるクズなんて……私が……私が」 言いかけると、皐月はその場にへたりこみ、泣きじゃくった。 いくら多学年の生徒でも、いくら関わりがない生徒でも、目の前で死ねば、悲しい…… 「……殺せない……殺せないよ……関係のない生徒が死んだだけでもこんなに悲しいのに。自分から生徒を殺すことなんて……」 その皐月の嘆きを聞いて、私も含め全員がはっとした。 私達にはまだ『人』を殺す覚悟がないことを、思い知らされた。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!