暴走

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「うるさい!うるさい!うるさーい!」 叫んだのは誰なのか? この日の4時間目、2年B組の教室で、英語の授業が行われていた。 黒板に英文を書く野口先生。 シャープペンを回しながら、それを見ている龍。 隣の席にいる明歩は欠伸をした。退屈そうだ。 その次の瞬間だった。 眠たそうにしていた明歩の瞳が大きく見開いた。 右手でこめかみに触る明歩。 微かに、唇が動いた。 「誰?」と言ったように見えた。 明歩の表情が変化していく。 驚きと戸惑い、そして若干の苛立ちが感じられた。 明歩はいきなり、両手で机を叩き、 「うるさい!うるさい!うるさーい!」と立ち上がって叫んだ。 驚いて明歩を見つめるクラスメイトと野口先生。 龍はシャープペンを落とした。 「ど……どうしたんだね? 阿部くん……」 野口先生が明歩に聞く。 明歩は正気に戻ったかのように 「あっ! な……なんでもありません…… 疲れてるみたいで、保健室で休んでてもいいですか……」 「あ…ああ、わかった」 「すみません」 明歩は教室を後にした。 ざわつく生徒達。 「し……静かに授業を続けるぞ」 野口先生は再び黒板に英文を書き始めた。 龍はシャープペンを拾った。
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