◆ほんの一時の休息◆

8/16

3355人が本棚に入れています
本棚に追加
/541ページ
個別に用意された部屋に戻った泰陽は早速ベッドに腰をかけ、ため息を吐く。 というよりベッド以外見当たらない。 華月に勝てるのだろうか、皆生き残れるのだろうか、戦いが終わった後に自分の居場所があるだろうかという不安が込められたため息だ。 「晴也……お前が言ってた太陽と月は助け合うものってのは、俺が兄貴の力を増幅させることを言ってたんだな」 晴也はテーブルの上で丸くなり、泰陽の言葉を黙って聞く。 「俺は一体なんなんだろうな。何をすることが一番俺の為になるんだろう……親友として俺のやるべきことは必ずやる。だけど……肝心な俺の戦う理由は一体……」 泰陽がぶつぶつ呟いていると、晴也はまるで呆れたかのようにため息を吐いた。 そしてテーブルの上から飛び降り泰陽の肩に乗っかってきた。 「なぁ、泰陽」 「ん?」 泰陽が晴也の方を向いた瞬間、晴也は思いっきり泰陽の顔面を引っ掻いた! 「イッテェェェ!!」 泰陽は顔を押さえベッドの上でのたうちまわっていると、いつの間にかテーブルの上に戻っていた晴也が口を開く。 「俺が言うのもなんだっスけど、初心に返るっスよ」 「はぁ……はぁ……初心?」 落ち着きを取り戻した泰陽はそう聞き返す。 「ごちゃごちゃ考えんな! 俺と出会った頃のアンタの目的は忘れたんスか!?」 「出会った頃の……」 泰陽は目を見開く。 晴也と出会った時、何を思って華月と戦ったのか…… 《優しかった兄貴を取り戻す》 そして泰陽はガシガシと頭を掻くと、ベッドで大の字になる。 「そうか……普通に戻ればいいんだ。兄貴を改心させて、あの楽しかった高校生活に。全部元通りにすりゃいいんだよ」
/541ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3355人が本棚に入れています
本棚に追加