◆セインVS緋乃◆

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「ま、幻に決まっている! 何故なら……」 「何故なら?」 「い、今までいなかったではないか!」 「……吹けば消えてしまう蝋燭の火の如く……そんな儚い根拠であなたはこの少女を見捨てると?」 緋乃がそう言うと、セインは悔しさを押し殺すようにギュッと拳を握る。 幻だ。 幻なのは明白だ。 なのに、手が出ない。 一歩が踏み出せない。 煉の親友の一人でもある目の前の少女を見捨てるなど……出来る筈がない。 「疑いを持たぬ心、正直な心、仲間想いな心、人の美しさを際立てるその純真なる性……誠に美しい」 緋乃は微笑みながらそう言った。 しかし、次の瞬間! 緋乃の表情から笑みは消え失せ、まるで人を見下すかのような冷たい視線がセインに向けられる。 「けれど……それが命取りになるのですよ。幻惑とはそういう者にこそ真価を発揮する」 緋乃は扇子をヒメの首にくい込んでいく。 ヒメは苦しそうに呻き声をあげ、緋乃から逃れようと暴れる。 「や、やめろ!!」 「何故? この少女は幻ですよ?」 「う……く! 」 緋乃が幻だと言うのだから幻なのだろう。 だが、そう思わせて助けようさせ少女を殺す気では? いやだが、その裏を突き…… 「…………っ!!」 セインはやはり動けずにいた。
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