◆ほんの一時の休息◆

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煉は自分の胸に手を当てる。 違和感を感じることはないが、今までの話を聞いて確かに裁きの猫が自分に宿っている確信はある。 出来れば使いたくない。 その強大な力が誰かに利用されるのが怖いからだ。 「どうする? 鍵を開ける? 私は今しか動けない。後で私の力全てをりっちゃんの為に使わなきゃいけないから」 美奈にそう言われた煉は考え込む。 リスクを恐れているのだ。 裁きの猫を出現させ、もし自分が誰かに負けたらその力を悪用されてしまう可能性がある。 でも煉の考えた世界を救う方法には裁きの猫が必要不可欠。 その時だった。 「自分を信じろ、煉」 「!?」 教会の出入り口である扉の前には沙助がいた。 沙助はゆっくりと歩き煉と美奈に近寄る。 「最後に臆病になる必要があるか? 今まで通り親友達を、死んだ者の絆を、拙者を信じて前を向けばいいではないか。煉に出来ないことはない。あったとしても仲間がいれば出来る。今までがそうであったように。そうであろう?」 沙助がそう言うと煉は自分の胸に手を当てたまま目をつぶる。
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