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「…………」
里奈は孝地の思いを黙って聞いていた。
すると、孝地は服の袖で涙を拭うと力強い笑みを浮かべた。
「だからさ……俺なりの戦いをさせてくれよ。お前らを笑顔で見送らせてくれよ。きっと別の形で役に立ってみせるから。潔く俺を置いて行ってくれ」
孝地がそう言うと、里奈は孝地のとこまで階段を降りて拳を突き出す。
「分かった。なら孝地の想いをあたしが持ってく。それならいいでしょ?」
「…………ありがとう、里奈」
孝地は自分の拳を里奈の拳にコツンとぶつける。
すると、里奈は両足に朱い炎を宿した。
「これでどんなに離れててもあたし達は一緒に戦ってるから。あの紙、絶対に手放さないからね」
そう言うと里奈は強化した脚力でジャンプし、階段を駆け上がっていく。
孝地はそれを笑顔で見送ると、両手で自分の頬を叩いた。
「さてと! まだまだやることがたんまりあるな、カヅチ!」
「うん! 俺らには俺らなりの戦い方!」
「ああ、見せてやろうぜ!」
孝地は勢いよく階段を降り始めた。
孝地も里奈もいなくなり、静まり返る階段。
その時、気絶している筈のジルの手の指がピクリと動いた。
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