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「へへっ」
「てめぇ……」
薄ら笑いを浮かべる草部をジルは睨んでいる。
針を全て元に戻したジルは鞭を構え今にも走り出してきそうだ。
草部も大木から屋上に飛び移ると柄が長いトンカチを構える。
「…………」
「…………」
二人共、微かな息の荒さから察している。
互いに体力が無いことを。
草部は煉との全力での戦闘で、ジルは度重なる戦闘と卯化の行使により疲れ切っている。
恐らく戦闘は長引かない。
両者共に長引かせる程の体力は無いからだ。
「おいおい、あんた大丈夫か? お疲れのようだけど?」
「そりゃこっちの台詞だ、ガキ。グロッキーなのは見え見えなんだよ」
互いの睨みがぶつかり見えない火花を散らす。
そして、草部の頭から頬にかけて一粒の汗が垂れていく。
その汗が顎に到達し、ぽとりと雫になって床に落ちた瞬間!
「おらあぁぁぁ!!」
トンカチを構えて草部が走り出す。
「てめぇは絶対に殺す! さっさと来なぁ!!」
ジルも迎え撃つ体制だ。
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