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「なんなんだ、この点数は!! 貴様それでも私の息子か!?」
眼鏡をかけたいかにもエリートの道を推進中のような男性が小学生ぐらいの男の子をビンタした。
男の子は頭を下げひたすら謝っている。
泣いてはいない。
悲しんでいる表情でもない。
こんなことは日課であり慣れているような仕草だった。
キッチンカウンターの向こう側で料理をしている母親は我関せずといった様子だ。
「課題を出しておく。今日中に私に提出しなさい。出来なかった場合は1日の宿題量を更に増やす。いいな?」
「はい、お父さん」
そう言ってリビングを後にする男の子。
その手には決して高いとはいえない点数のテスト。
男の子は二階へと続く階段を上がり、自分の部屋へと入る。
高級そうな赤を基調としたカーペット、勉強机にベット、そして大きな本棚が三つ。
おもちゃもない。
漫画もない。
テレビもない。
勿論ゲームもない。
あるのは必要最低限の家具とびっしり参考書が詰まれた本棚。
会社を経営している父親は正にエリートだった。
全てにおいて完璧であり、全てを見下している。
そして、そうなるようにと息子に理解できる筈もない参考書を与えて強要させていた。
男の子は勉強机の席に着くと、テストを丸めてゴミ箱に突っ込む。
マイク・ムジカ……10歳の頃の生活である。
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