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両親に内緒で買ったある物を枕の下から取り出す。
最近、学校で流行っている物でありマイクの憩いの時間を過ごすアイテム……それはヨーヨーだ。
真っ赤なフレームに刻まれた子ども心をくすぐる格好いい紋章。
マイクは寝る前は必ずヨーヨーで遊んでいるのだ。
「よし、まずはウォーク・ザ・ドッグだ」
手首を捻り真下に伸ばしたヨーヨーを床に当てる。
すると、ヨーヨーがその回転で床を進み始めた。
犬の散歩と呼ばれる技だ。
「次はフォワード・パス!」
前方に伸ばしたヨーヨーが戻ってきて、マイクはそれを手の平を上にしキャッチする。
勉強は苦手だ。
学校の勉強はそれなりに理解できるが、難問ばかりをぶつけられたマイクは勉強そのものを嫌いになっていた。
しかし、ヨーヨーは好きだった。
練習次第で格好いい技ができるようになり、それをやっている自分も格好いいと思えたからだ。
「ロング・スリーパーに、ループ・ザ・ループ! ムーン・サルトからのジャグリング・トラピーズ!!」
上達していく感覚。
難しい技ができるようになる、自分が上手くなったと感じたあの一瞬。
それは父親のスパルタ教育すらも忘れられる程の楽しさだった。
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