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まるで蜃気楼……
信者が指を差した家の屋根の上辺り、空間が歪んでいるかのような光景が広がっていた。
背景はそのままで、その景色自体がぐるぐると渦を巻いているかのように歪んでいるのだ。
「な、なに、あれ……」
ヒメがそう呟いた時だった。
その歪みが段々と元の景色に戻り始める。
渦を巻いていた空間が逆回転し、徐々に戻っていく。
「…………」
ヒメが唖然とするなか、空間の歪みが完全に収まったその場所には誰かがいた。
所々花柄の真っ赤な着物を紫色の帯で締めており、右手には少し大きめの黒い扇子。
前髪を揃えた長い黒髪、お姫様カットというものだろうか。
白い肌に誘惑されそうな何処か色っぽい目、正しく和風美人がそこにいた。
「うふふ……お初にお目にかかります。元日本支部筆頭と申します。以後お見知りおきを」
「私は姫岸 恋。こんな幻惑の世界に私達を入れたのはあなた?」
ヒメがそう言うと、緋乃は扇子で口元を隠し目で笑う。
「ご名答。手荒い物事は嫌い故、このような美しき幻想にあなた方を招き入れました」
そう言いながら緋乃の瞳の色が灰色に変わっていく!
「私と同じ……じゃあもう一つ属性が……」
「では、お手柔らかにお願いします」
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