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北野星太郎は困った顔をしていた。あたしはそんな北野星太郎の瞳をじっとみつめていた。どうしてか、北野星太郎の瞳から目が離せなかった。
あたしの目的は、彼を殺すこと。理由は、わからない。ただわかっているのは、あたしには今彼を殺すために彼の家に居候する必要があると言うことだった。
「帰るところもわからないのか」
「……」
あたしは黙って頷いた。
北野星太郎は、迷っているようだった。
「あたしをここに置いてもらえませんか?」
「……」
北野星太郎は驚いた顔をしていた。そして、さらに表情を険しくした。
「…そうか、」
「やはり、だめ…ですか?」
あたしは首を傾げ、寂しそうな顔をしてみせたが、北野星太郎はあたしから視線をそらしたままだった。
「そうじゃない」
「じゃあ…」
「あ、ああ。構わない。…しかし」
いいんですね?と言いかけたあたしの言葉を北野星太郎が遮った。
どこかそわそわしていた北野星太郎が、突然あたしをまっすぐに見つめた。その表情は、あたしの瞳には冷たく映った。
「間違っても私の研究室には入らないでくれ」
あたしは北野星太郎の研究室に興味もなかったので素直に頷いた。
「…わかりました」
「あ…、寒くはないか?」
そう言って、あたしを控えめに見つめる北野星太郎は、つい先ほどの表情とは全く違っていた。
「ええ、大丈夫です」
「いや、せめて紅茶を出そう」
「あ!構わないでください」
そう言って北野星太郎を引き止めたあたしに、北野星太郎は振り返って苦笑した。
「いや、あまり俺に気を使わないでくれ」
「え、しかし…」
「ああ。、それと…。ひとつ言っておくが、私は君を信用して居候する事を許可したわけではない」
あたしの言葉をまたも遮った北野星太郎の表情は、先ほどと同じように冷たいものだった。
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