プロローグ

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-1-  最近は物騒になってきたと思う。 そう思っているのは間違いない、けれどテレビで見るニュースは、どこか遠くで起きた、自分には全く関係の無い世界のもの、と考えてしまい。  自分の知らないところで様々な事象が起きているんだと、まるで他人事のように見ていた。  だが、それらが自分の近くで起きると、あれだけ無関心だったのが嘘のように、関心が沸く。  なんとなく物騒だと思っていた感情が、一気に確信へと変わっていく。  例えば、今日の朝のニュースでは、学校の近くで交通事故があったとか、または、この街の若者を中心に広がる謎の病気に密着など。  そういえば事故現場の近くをいつも通ってたな、痕跡とか残ってるのだろうか? など、つい考えてしまう。  若者を中心に広がる病気も、自分と同じ年齢の人が罹患してたり、近くで起きたのか、知り合いはいないか? なども考えてしまう。  どれも事件のニュースだ。  それなのに何故か関心があるのは謎の病気、というとこだった。  なぜなら自分の住んでいる町が一番発症率が高いからだ。  全国でここ3年の発症者は76名程度で、20代から40代が中心で約9割を占めている。  その中でも27人がこの街で発見されている。年齢層は10代から30代とのこと。  まだ正式な病名はない。  かろうじて突発性意識障害、みたいな名前があるくらいだ。  症状はただ眠り続けるだけ。これといった外傷も無く。体のどこかに異常が見られたわけでもなく、もちろん脳も健康らしい。  しかも原因がわからない以上、医者もお手上げで、的確な治療法もないままイタズラに時間ばかりが過ぎている。  脳死とは別で目を覚ます人もいる。  だが、この謎の症状の発症者はいずれも、発見された時にはすでに手遅れで、いつ、どうなって発症したかがわからないという。  運良く目覚めても、ほぼ全員が直前の記憶がない。  外傷がなく、自然に目を覚ますので今まではそこまで問題になっていなかったらしいが、ここ数ヶ月でこの街で27人が同じような症状で入院したという。  原因はなんなのか、ガス漏れ、ウィルス、ストレスや化学物質だとか憶測が流れているのをニュースでやっていた。  全国で見れば対した話題ではないのかも知れないが、この街でこんな短期間で起きたことでローカルニュースとして流れたのだろう。  そういえば詳しい理由は忘れたが、今週中に国の研究チームが来るみたいな事をアナウンサーが言っていた気がする。  まぁ、だからと言って俺の日常には全く変化は無いのだが。  身近なところでそういうことが起こっていることには、いささか恐怖を感じるが、結局人は自分がそうならないと信じている。  学校で担任から風邪が流行っているから気をつけろ、と言われても。  自分は風邪を引かないだろう、関係ないだろうと思ってしまう。  だから、今回も、そう信じている。
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