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「あぁ、なんて…何て綺麗…」
花が咲き、小鳥が歌い、日差しも穏やかな春の日。
心地よい風が開いた窓から入り込み、ミントグリーンの髪を揺らすのをも気に掛けず
彼女は翡翠の瞳を輝かせ
目の前の石に向かってそう告げた。
彼女の名は ナティル・マローニエ。
7大陸の中でも学問に重きを置くフォーリンの首都、クリムソンにある王立学園をトップで卒業し、教師として戻ってきた最年少の博士である。
専門は鉱物で、それ以外には全く興味を示さないという変わり者でもある彼女は
心の底から石を愛していた。
他人から見ればただの石ころでも、彼女には愛すべき対象の為
道端に落ちている石をことごとく拾ってきてしまうという彼女の癖のせいで彼女が在学時代
「学園内以外の無機物を自室に入れるのを禁ずる。尚、必需品の場合は担当教師の許可を得ること」
という校則が出来たという伝説まである。
現在15歳。通常ならば学園にすら入っていない年齢で教師なので、生徒からも軽んじられることも多いが、本人は全く気にしていない。
何故ならば彼女にとって最重要事項は「石をどれだけ愛でていられるか」だからで
石を愛でていて授業に遅れることがざらだった彼女を学園が放っておくはずもなく、対策も講じられた。
『授業に遅刻したら、今後一切、採掘禁止』
学園所有の鉱山での採掘を禁止されて漸く、彼女は通常の教師としての仕事をこなせるようになった。
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